マインドフルネスに生きる。
今この瞬間のリアルを味わう
先日、お寿司屋さんに行った時のこと。
カウンターに座って板前さんと会話をはずませながらお寿司を食べていたら、隣の席に座っていたおそらく観光客らしき韓国人の方2人が、注文したお寿司が目の前に運ばれてくるやいなや、スマートフォンで写真を撮り、その場でSNSに投稿を始めました。
その後も、彼らはスマホでSNSをちらちら見ながら、お寿司を口に運んでいました。
せっかく日本まで来ているのに、お寿司を味わうことよりも、SNSで投稿した写真にどれだけの「いいね」がつくかばかり気にしている様子。
カウンター越しに板前さんたちがお寿司を一つ一つ握る様子や、新鮮なお魚の味を”ライブで”味わってほしいな、とお節介ながら思ってしまったのです。
でもこういった光景、今や決して珍しいことではありません。
私もSNSを使うので、こういった場面を見る度、気をつけよう、と思うのです。
自動操縦モードから、マインドフルネス・モードへ
最近「マインドフルネス」という言葉を良く耳にするようになりました。
先日、あるイベントに参加したとき、そこで「お抹茶点て体験」というのがありました。
その時司会者の方が、「お抹茶を点ててマインドフルネスな時間を過ごす」という言葉を使われていたのが印象に残っています。
「マインドフルネス」とは、今この瞬間に起こっていることをはっきり知ること。
自分の体、感情や思考、または世界で、何が起こっているかをはっきり知ることです。
日本の伝統文化である「茶の湯」や「生花」にも、マインドフルネスの要素が詰まっています。
それもそのはず。
マインドフルネスというのは、最近になって急に出てきたものではなく、その根底にあるものは、何千年も前から実践されてきた「瞑想」のエッセンスであり、それを現代人にフィットしやすいように、宗教性を排除し、よりシンプルにわかりやすく提案されているものなのです。
例えば、
テレビを見ながらご飯を食べるのと、
ご飯を食べることだけに意識を集中するのとでは、
全く違う体験です。
前者は、いわゆる「自動操縦モード」。
ほぼ無意識に手が動き、ご飯が口に運ばれていきます。
意識はテレビの中の物語に夢中です。
あるいは、そのテレビにすら意識は集中せず、別のことをあれこれと考えているかもしれません。
心ここにあらずな状態です。
後者は、ご飯のあたたかさや食感、味、噛む音、食道を通って胃の中に落ちていく様子に意識を100%集中しています。
100%ご飯を味わっているのは、当然ながら後者の方。
私たちは、脳内のおしゃべり、つまり無意識に頭の中であれこれ考えることに、多くのエネルギーを費やしています。
思考に占拠されてしまうと、身体感覚は段々薄れていき、心と身体はバラバラになっていきます。
目の前で起こっているありのままのリアルな現実を見過ごし、脳内で展開されるストーリーや間違った認識に振り回されながら生きることになります。
どちらがストレスが少ないか、明白です。
実際に、マインドフルネスはストレスマネジメント法としても活用され、医学的にもその効果が証明されているようです。
マインドフルネスを実践する時、つまり、完璧に今この瞬間に集中しているときというのは、心と体は一つになります。
それがとても気持ちがいいということを、ヨガを実践されている方ならすでに知っているはずです。
ヨガ自体が、マインドフルネスの実践でもあるわけですから。
日常の素晴らしい瞬間を知る
先に、食べることを例に挙げましたが、日常は素晴らしい瞬間で満ちています。
空気が新鮮であること
空が青いこと
道端に咲いている花が美しいこと
こういった日常に溢れている素晴らしい瞬間に気づくことは、決して難しいことではないはずです。
にもかかわらず、今この瞬間を味わう充足感を知らないまま、私たちは頭の中で「◯◯◯すれば、◯
◯ができるようになれば、幸せになれる」、といった考え(思い込み)に縛られて生きています。
それは、知らず知らずのうちに、自分自身にストレスを与えているよようなものです。
現代社会は、便利だけれど、そういった意味では生きにくい環境なのかもしれません。
私たちの意識を簡単に「今ここ」から引き離し、欲や怒りを喚起するモノや情報で溢れているからです。
そんな現代社会で生きる私たちにとって役に立つのが、呼吸に意識を向けるマインドフルネス・瞑想ではないでしょうか。
呼吸に意識を向ける
今この瞬間をはっきり知るための一番簡単で良い方法は、呼吸に意識を向けることだと感じています。
ヨガの練習の中でも、アーサナ(ポーズ)が完璧にとれることよりも、最も大切なのは呼吸に意識を向けることです。
様々な瞑想の手法の中でも、呼吸に意識を向ける方法、「数息観(呼吸をカウントする方法)」などは瞑想初心者でも取り組みやすいと言われています。
呼吸に意識の焦点を合わせると、
脳内の様々なおしゃベリが静かになってきます。
意識は今この瞬間にしっかり根付き、
心と身体が一つになります。
静かに座って、一つ一つの呼吸を丁寧に味わうとき、
私は今この瞬間に生きています。
それは人生を丁寧に生きることに直結していると思います。
息を吸うとき、身体の内側にどんな感覚がありますか。
息を吐くとき、どんな感じがしますか。
ありのままの感覚に、静かに耳を済ませてみましょう。
私は、呼吸に意識をぴったりと寄り添わせるとき、
普段ぼんやりとしている
今生きていることのありがたさや
自然の美しさを
はっきりと感じます。
本当に大切なことは、とてもシンプルです。
皆さんも、ぜひ日常生活の中でマインドフルネスを実践してみてくださいね。