2019-01-25
産後女性に骨盤底筋トレーニング・ヨガが必要な理由
以前、産婦人科医の高尾美穂先生から「骨盤底筋トレーニングヨガ」を学びました。
それは、私がムサコヨガで産後ヨガのレッスンを始めるに当たり、骨盤底筋へのアプローチは女性、特に産後女性に絶対必要だ、と思ったからです。
主に産後ヨガのクラスでそのトレーニングを取り入れてもうすぐ2年余りが経とうとしていますが、今回は、そもそも骨盤底筋って何?というところから、なぜ女性にとって骨盤底筋のトレーニングが重要なのかをシェアしたいと思います。
1.骨盤底筋って何?
骨盤の底辺にある小さな筋肉群で、3層構造になっています。 主な役割は ⑴ 内臓支持機能:膀胱や子宮や直腸を下から支える ⑵ 排尿・排便のコントロール、出産:内側と外側の通り道としての機能 骨盤底には3つの穴(開口部):尿道、腟、肛門があります。 ⑶ 腹圧のコントロール ⑷ 姿勢の安定 骨盤底筋は腹横筋、多裂筋、横隔膜と並んでインナーユニット(いわゆる体幹の筋肉、インナーマッスル)の一つで、姿勢の保持にも関わってきます。 1番目と2番目は、どこか矛盾しているように感じませんか? 膀胱や子宮などを下から支えるという重要な機能がある一方で、開口部があり、特に出産では赤ちゃんの通路として最大限開いてしまうわけですから、私はこのことを知った時に、女性の骨盤底ってとても脆い構造なんだなぁという印象でした。2.出産によって起こる骨盤底筋へのダメージと機能障害
出産、特に経腟分娩では骨盤底筋が大きく伸ばされ、緩みます。 また筋肉だけでなく陰部神経が過剰に伸ばされる為に大きなダメージを受けます。 運動神経が損傷すると、筋肉量が低下してしまうので、産後早い段階で傷ついた神経を回復するトレーニングが大切であると高尾先生も強調しておられました。 骨盤底筋の機能不全によって起こる代表的な症状は尿漏れと臓器脱。 妊娠〜出産で腹部の筋肉及び骨盤底筋が弱まるので、腹圧がかかった時にそれを内側に留めることができず、下方向に押し出されてしまうのです。 尿漏れ(尿失禁) 咳やくしゃみをした時、重い荷物を持ち上げたり運動でお腹に力が入った時に尿が漏れてしまう腹圧性尿失禁。 加齢によってそのリスクは高まる傾向にあります。 お産によって腟がダメージを受けるので、腟と尿道両方をカバーしている筋肉の損傷が尿漏れに繋がるとイメージしてもらえばいいかと思います。 女性の尿道は男性に比べて短いこともリスクの要因です。 骨盤臓器脱 妊娠、出産によってダメージを受けた骨盤底が臓器を支える力を失い、重症化すると子宮脱や膀胱瘤などを引き起こすことがあります。 こういったマイナートラブルは、はっきり言って人には相談しにくいものです。 だからと言って放っておくと、外出するのが億劫になってしまったり、トイレの度にストレスになってしまい生活の質を落としてしまうことに繋がりかねません。3. 骨盤底筋は意識しづらく、鍛えにくい?
骨盤底筋は自分の意志でコントロールできる随意筋ではあるのですが、非常に小さな筋肉で、単独で動かすのが難しい部分です。 骨盤底筋にフォーカスして鍛えようとしようとした時、肛門を締めたり、尿の流れを我慢するといったアプローチをとられることが多いですが、厳密には肛門の筋肉など他の筋肉も一緒に動いています。 またアウターマッスルのように鍛えれば大きくなるというものではなく、目に見えない上に鍛えても肥大化することはありません。 なので、鍛える、といっても実際はとても地味なトレーニングを繰り返し行っていくしかないのです。4. ヨガでできる骨盤底筋へのアプローチ
骨盤底筋は意識しづらくて単独で動かすのは難しいという話をしました。 そこで高尾先生に教えていただいた中で私が積極的に取り入れているのが、間接的に骨盤底筋を鍛える方法です。 つまりは、骨盤底筋と繋がっている筋肉を刺激することで、周りから攻めようというもの。 例えば、お尻の筋肉 大臀筋や、股関節外旋筋群など、主に股関節の動きと関わる筋肉にアプローチすることで、それらと筋連結している骨盤底筋にアプローチすることが可能です。お尻の筋肉や内腿の筋肉などは大きく、骨盤底筋に比べたらずっと意識しやすいですし、使えているかどうかを触って確認することも可能です。 また、最初にお伝えしたように、骨盤底筋はインナーユニットの一つなので、深層の腹筋群を使うことによって、また呼吸との連動によって十分に鍛えることが可能です。 具体的なポーズはたくさんあります。 クラスで説明を加えながら実践していきますので、いいなぁと思ったものはぜひ覚えていただき、ご自宅でも日常のトレーニングに取り入れてみてください。 また、骨盤底筋は、「遅筋」と言ってゆっくり一定時間キープすることで鍛えられますから、素早い動きよりも、ヨガのようにゆったりとした動きと相性がいいのです。 しかし、骨盤底筋を直接鍛える方法、実は伝統的なヨガの練習にもありました。 「ムーラバンダ」と言い、「骨盤底の筋肉を引き上げることにより、この部分を収縮させ、そして緩める」ことを言います。(※1) ムーラとは根や源という意味、バンダとはヨガにおいて締める、ロックするという意味で 伝統的なヨガではポーズの練習に組み合わせて行われることも多く、特にヨガをスピリチュアルな目的の為に練習するのであれば欠かすことができないものです。もちろん女性だけでなく男性も。 ムーラバンダの本来の目的は尿漏れ防止、ではなく、第1チャクラであるムーラダーラチャクラを刺激し、性的なエネルギーをスピリチュアルなエネルギーへと昇華させることを目的に行われるのですが、実際これを行うことによって、実用面では骨盤底筋を鍛える効果があるのではないでしょうか。ムーラバンダについては、ハタヨガのクラスでお伝えできればと思っています。 いかがでしたか? 骨盤底筋を鍛える重要性、少しでも皆さんに伝われば幸いです。 骨盤底筋を鍛えることで、尿漏れなどの防止だけでなく、姿勢の改善やヒップアップの効果も期待できます。 興味がある方はぜひ産後早めの段階からトレーニングを始めてみてくださいね。 産後ヨガについて詳しくはこちら (※1)スワミ・サティヤナンダ・サラスワティ 『アサナ プラナヤマ ムドラ バンダ』関連記事
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